明日へのメモリー

「もしもし……樹さん? 美里です……。お久しぶりです。今、電話してもよかった?」

「美里? ほんとに久しぶりだな。どうした? 何だかちょっと声が改まってる気がするけど?」


 緊張しながら切り出したわたしに、いつものからかうような低い声が返ってきた。たちまち胸がいっぱいになる。


「あの……、今見たの。素敵なプレゼント、どうもありがとう。びっくりしちゃって……。樹さんが帰国してることも知らなかったから……。いつこっちに戻ったの?」

「四日前かな。悪い悪い。色々と立て込んでたせいで電話もしなかったな。するつもりだったんだけど……って、そこで笑うなよ。で、気に入った? それ……」

「もちろん! だ、だけど、こんな高そうなもの、どうして……」

「向こうで見つけてさ、お前に似合いそうだと思ったんだ。気に入ったら貰っとけよ。最近どうしてる? ちゃんと大学行ってるのか?」

 言い始めたお礼はすぐにはぐらかされて、保護者みたいに最近のわたしの様子をあれこれ尋ねてくる。
すり切れそうだった心が、ふわりと和むのを感じた。


 いけない、和んでる場合じゃないでしょ!
 お見合いのこと、話さなくちゃ……。


 けれど、気楽に電話で言えるような内容じゃなかった。

それに彼の声を聞いているうちに、会いたくてたまらなくなってきた。

 最後にもう一度だけ会えたら、そうしたら……。
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