明日へのメモリー
翌日、わたしは気合を入れてドレスアップした。
アイボリーのセーターとお気に入りのミニワンピースを組み合わせ、襟元と袖口にファーの付いたショートコートを羽織る。
会えなかった間に伸ばした髪をふわりと結い、やっと板についたやわらかいメイクでフェミニンにまとめた。
ルビーのペンダントは返すことにした。やっぱり気楽にもらえる物じゃないし……。
うん、こんなものよね。
鏡の自分に満足すると、母に友達と約束があるから遅くなる、と言って家を出た。
約束の八時半になっても、樹さんは来なかった。
自動ドアが開くたびに違う人で悲しくなる。来ないなら、せめて電話くれるよね……。
さすがに携帯を取り上げたとき、またドアが開いた。彼だ!
わたしの視界がたちまち曇ってきた。
スーツの上に無造作にコートを引っ掛けた樹さんは、焦るように店内を見回している。
わたしに気付くと、まぶしいほどの笑顔になった。
「悪い、道が混んでてさ。完全に遅刻だな……。腹減ってるだろ?」
それでも急いで来てくれたんだ。
向かいに座ると彼はウェイターにコートを渡し、すぐ注文してくれた。