明日へのメモリー
わたし達は少しの間、黙って見つめ合った。
七か月ぶり。ますます素敵になった気がする。チャコールグレーの、おそらくオーダーメイドのスーツがとても似合う男性に。
彼の目に、わたしはどう映っているだろう。まだお子様のままかしら?
ちょっと心配になった時、彼の瞳に満足そうな輝きが見えた。もう十分、と思い直す。
「お帰りなさい。お仕事、お疲れ様でした!」
会ったら真っ先に言おうと決めていた言葉。
白い歯を見せて微笑んだ彼は、いきなりスーツのポケットからバラの花のトッピングのついたきれいな小箱を出してきた。
「お前に、土産その二」
はしゃいだ声を上げてパッケージを開こうとしたところで、止められた。
「土産その一は? なんで今日してこなかった?」
それがルビーのペンダントのことだとわかるまで、少しかかった。
「あ、あれはその……、持ってきてるけど、バッグの中」
「バッグにあったって仕方ないだろ? 出せよ、付けてやるから」
呆れ顔で促される。引く気がないとわかると、わたしは恐る恐る箱を取り出した。
樹さんが金鎖を留めてくれている間、首筋に触れる指先とコロンのかすかな香りに、一人どきどきしていた。