明日へのメモリー
6
そして今。
夢の夜の仕上げのように、東京を見下ろすスカイラウンジで、樹さんと並んで街の灯を眺めている。
食事の後、静かな場所で話したいことがある、と言ったら、ここへ連れてきてくれた。
こういう所に二人きりで来るのは初めてだ。
急に無口になったわたしに、彼が軽いカクテルを薦めてくれる。
「そ、それじゃまず、わたし達の久しぶりの再会に乾杯する?」
無理やり陽気にグラスを取り上げると彼もそうする。カチリとかすかに触れ合わせ、カクテルを一口含んだ。
甘くてどこかほろ苦い。最後の夜にぴったりだ。
「わたし達、初めて会ってから、どれくらい経つんだっけ?」
一生懸命、明るく彼を見上げた。もちろん昨日のことのように覚えているけれど、彼の口から言って欲しかった。
「急に何を言い出すかと思えば……。もう三年以上経っただろ? 長かったようで、あっという間だったな」
忘れたのかよ、相変わらず頭悪い奴……。こつんと頭をこずかれ、どうせ、F女子大ですよー、K大には遠く及びませんから と舌を出す。
「そうそう。あの時、いきなり酔っ払ったおじいちゃんに呼ばれて……」
「お子様だったもんなぁ、お前……。中学生にしか見えなかったぞ」
「悪かったわね!」笑いながら、ちょっと膨れて言い返す。