明日へのメモリー

 ああ、この味……、本当に久しぶり。

 とても恋しかった。待ち焦がれていた。でも、もう最後かもしれない……。

 そう思うと、以前の何倍も激しくキスを返していた。

 彼も情熱的に受け止めてくれたかと思うと、さらっとかわしてきたり、まるでじらされているような気分になる。

 今度はわたしの方から、夢中で彼を求めていった。

 抗議するように呻く声がした。彼の手が胸に滑ってくると思わず震えた。わたしだけじゃない。樹さんもどんどん緊張しているのがわかる。

 でも、これ以上はだめ。今どこにいるのかも忘れて、のめり込んでしまうから……。


 そのとき、はぁと息を乱して彼がいきなり顔を上げた。

「今日は、反応がやけにいいな」

 慌てて身を引こうとしたけれど、ぐっと抑えられて動けなくなる。彼の目を避け「何でもないの」とかぶりを振った。

「わたしも、少しは成長したのかも……」

「美里」

 静かにはっきり名を呼ばれ、また黙ってしまった。

 彼は待ってるんだ……。

 わたしは目を閉じた。でも、樹さんの追及はやまない。

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