明日へのメモリー

「何があった?」

「……ん、ちょっと……ね」

「さっき、俺に話があるって言ったよな?」

 目を伏せたままうなずく。

「関係あるんだな?」

「……うん、まぁ」

「そのために今夜、俺を呼び出したんだろ? なら、さっさと言ってしまえよ」

 さっきのキスの後で、他の男性との縁談をどう切り出せばいいのか、わからなかった。

 それに、口に出せばこの大切な恋に別れを告げることになる。
『さよなら』は、ありったけの勇気をかき集めなければ言えそうにない。

 まだためらうわたしを見て、彼はひとつため息をついた。少し距離をとると、いいか? と確認して、タバコに火をつける。

 こちらに煙が来ないように時折横を向きながら、なおも尋ねるようにわたしを眺めている。


「じ、実は……わたし、け、結婚することになったの……」

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