明日へのメモリー
そして、五日後の日曜日。
振袖を着せられたわたしは、都内の料亭で、両親と向こうのご両親に囲まれて、そのお坊ちゃまに会っていた。
お堅そうな雰囲気をのぞけば悪い人ではなく、親は安心したようだ。
でも、そのときは、たとえ銀行の看板がスーツを着て座っていたとしても、微笑みながら会話したに違いない。
「これもご縁ですわね」
「本当に、良いご縁ですこと」
などと、ぎこちない本人同士にはお構いなく、周りで勝手に盛り上がり、結納の日取りまでどんどん決まってしまう。
結婚って、こういうものなのね……。
十九歳になったばかりのわたしは、苦い現実をかみ締めながら、悟ったように心の中でつぶやいていた。