明日へのメモリー
部屋のドアを開けながら、ホテルマンが「急なことで、スタンダードのダブルルームしかご用意できませんが……」と、申し訳なさそうに説明している。
ダ、ダブル何……?
頬がかっと熱くなった。
樹さんは短く礼を言うと、中へ入るよう、わたしを無言でうながした。
二人きりになるや、裏返った声を上げてしまった。
「なんだか、樹さん、すっごく慣れてるみたい……。こういう所、よく来るの?」
そんなこと、どうだっていいだろ、と顔をしかめる彼に、まさかね……、と引きつった笑みを返し、周りを眺める。
柔らかなライトの下、広くてきれいで、とてもシンプルな部屋だ。
窓の前にくつろげそうなソファーと液晶テレビが置かれていたが、一番衝撃だったのは、ど真ん中に陣取る大きなダブルベッドだった。
見るなり、文字通り立ちすくんでしまう。
やだ、ここ、ラブホじゃないのに。
というか……、今からわたし達、本当に……?