明日へのメモリー
予想外の展開になった。
彼は驚いているわたしの手を掴むと、そのままはだけたシャツの胸元に差し入れていく。焦って引こうとしても、無駄な抵抗だった。
お、男の人の身体って、こんな風なんだ……。
強く押し当てられ、おっかなびっくり探索し始めた。
やがて好奇心に導かれ、彼の見た目よりたくましい身体にちょっと大胆に触れていく。
男性の胸は、女性と違う部分のひとつ……。
その先端に触れ、慌てて手を引っ込めようとしたけれど、続けて、というようにもう一度押し当てられる。
情けない顔で見返すと、彼がにやっと笑った。
「もうリタイアする気か? こんなチャンス、二度とないかもしれないぞ? そういつも、好きにできると思うなよ」
言われて、はっと現実を思い出した。
本当にその通りだ。これが最初で最後……。なら、彼の全てを手のひらに焼き付けておかなくちゃ。
彼が目を閉じて小さく身震いした。こんな下手な愛撫でも、少しは感じてくれてる? そう思うと、どきどきしてくる。
とうとうシャツのボタンを全部はずしてしまい、引き締まったお腹から下腹部にたどり着いた。
スラックスの下で彼自身が力強く存在をアピールしているのに気付き、戸惑う。
話には聞いていたけれど、とてもそこまで手を出す勇気はない。
動きが止まったことに気付いたように、彼が何かつぶやくと、わたしの手を取り上げた。
ほっとした途端、耳元で楽しそうな声がした。
「じゃ、今度は俺の番な」