明日へのメモリー
その晩、両親より早く帰宅したわたしは、リビングルームのテーブルに、ラッピングされた小さな箱がおいてあるのを見つけた。
これ……もしかしてプレゼント? 樹さんから?
急いで差出人を調べてみる。やっぱりだ。
添えられたカードを開くと、お祝いのメッセージが書かれていた。
『美里、やっと十九だな。遅くなったけど、誕生日おめでとう 榊原 樹』
溢れてくる思いのままに、わたしはそのカードと小箱をぎゅっと抱き締めると、バッグにしまい込んだ。
すぐには開かず、庭が見えるサンルームに入って行く。
そこはわたしが高校生だった頃、家庭教師をしてくれた樹さんとの、思い出の詰まった場所だった。
馬鹿なわたし……。未練がましいったら。
もう変えられないのに。
たとえわたしがずっと、彼のお嫁さんになりたかったとしても……。