明日へのメモリー

 その悦びを拒む理由は何もなかった。

 初めて知る扇情的な刺激に溺れ、全神経で、彼の唇と指先がもたらす悦びを感じていく。

 何だか、樹さんの息も上がってる……? そう思ったとき、今まで戯れていた指が一本、わたしの内側に滑り込んできて、はっと我に返った。

「少し……我慢しろ」

 囁かれ、ほぼ同時に痛みがあった。思わず枕から頭を上げて、起き上がろうとしたほど。

 再び身体を押さえ込まれ、曲げた両脚がだんだん突っ張ってくる。わたしの意志とは関係なく、その場所自身が懸命に侵入を拒んで抵抗していた。

 話に聞いたとおり、とても痛い……。

 指がわたしの中を慣らす様に少しずつ進んで来る間、わたしは恥ずかしさと痛みをこらえてじっとしていた。

 ぎゅっと閉じた目に涙がたまってくる。もう限界……。

「や! もうやだっ、お願い……」

 どこまでも深く入ろうとする彼を止めたくて、甲高い声をあげてしまった。

 そのとき、返事とも言えないかすれ声がして、はっとする。

 こんな声、初めて聞いた。完全にぎりぎりになっているみたいだ。

 かすんだ目を開くと、目の前の樹さんの額から汗が噴出している。そっと手のひらで汗の雫を拭い取った。

 彼の熱い眼差しがわたしを捉えた。ようやく指が引き抜かれ、ご褒美みたいにもう一度熱いキスが落ちてくる。

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