明日へのメモリー

 身体の奥がひりひりしてる……。


 目を覚ましたとき、辺りはうす暗かった。今何時だろう?

 間近に樹さんのぬくもりと息遣いを感じた。まだ二人とも裸だった。あのまま眠ってしまったらしい。

 わたしをしっかりと抱いたまま、彼は軽い寝息を立てている。

 起こさないよう、そっと頭をめぐらせ寝顔を眺めた。

 思ったより長いまつげ。前髪がくしゃっとなっているのも、顔半分、枕に埋もれているのも、全部覚えておきたい。

 見つめているうちに、奇妙な痛みがせまってきた。

 わたしってなんて欲張りなんだろう。たった今もらったばかりなのに、もっともっと欲しくなるなんて……。


 でも、勘違いしちゃ駄目……。

 激しい気持に流されそうになって、必死に自分に言い聞かせた。


 彼は、わたしに同情して抱いてくれただけ……。

 わたしの気持なんて、彼はずっとお見通しだったんだから。

 今、大人になったから、やっと応えてくれたの。

 彼に愛されてる……なんて、錯覚しちゃ駄目!

 そして……、これ以上まとわりついて、迷惑をかけることも……。

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