明日へのメモリー
おずおずとお返事しながら、解けない疑問が頭の中をぐるぐる回っていた。振袖で来て本当によかった。普通の服だったら、きっと気後れして逃げ帰りたくなっている。
「ただいま会長がお越しになりますので……」
案内してくれた女性が言った。両親もわたしもますます緊張し、お茶にも手を出せない。
わずかに廊下がきしみ、静かにまた障子が開いた。
長着羽織姿の堂々とした白髪の老人に続き、スーツ姿の樹さんが入ってきた。
見るなり、わたしは衝撃と共に、目が潤んでくるのを感じた。
やだ、また泣いちゃう……。
一生懸命我慢したけれど、ぽろっと涙が零れてしまい、慌ててぬぐった。
わたしの方をちらっと見た樹さんが、一瞬顔をしかめる。
九重の会長さんを真ん中にして、少し後方にお母さんと樹さんが座った。
こんなの、信じられない。いったい、どうなってるの?
そう思っていると、会長がこほんと咳払いして話し始めた。