明日へのメモリー
「美里……、会いたかった」
襟足に顔を埋め、樹さんがくぐもった声でつぶやいた。
息が止まりそうな中、一生懸命に言葉を探す。
「わ、わたしも……」
途端に彼は顔を上げた。怖い顔でわたしを睨みつける。
「ならどうしてあの晩、ずっと一緒にいなかったんだよ! 起きてみたらお前はいないし、おまけに……、なんだよ! あの『永遠の別れです』みたいな、頭に来るメール!」
「あれは……」
わたしは目を見張った。もしかして怒ってたの? それで連絡もくれなかった?
「だって、もう会えないと思ってたんだもの。これで本当にお別れだって……。だから……」
また涙ぐんだわたしの顔を、彼は呆れたように覗き込んだ。
「それじゃお前、あの銀行家の息子と本気で結婚するつもりだったのか? 俺とあんな夜を過ごした後で? ……ふざけるなよ!」
突然怒声を上げた樹さんにびっくりし、一瞬真っ白になった。肩を押さえられ、端正な顔が目の前に迫ってくる。
「二年も我慢させられた挙句、あれだけで済むと思ったら大間違いだからな!」
「……えっ?」
目を見張って問い返すより早く、唇をふさがれた。
あの夜をイヤでも思い出させるような、全てを与え、奪い取るようなキス。
わたしもたちまち夢中で応え始める。