明日へのメモリー
わ、かっこいい!
彼と目が合った途端、胸の奥がどきっとした。
すらっとした長身に甘いマスク。少し長めの髪が額にさらりとかかり、その陰から鋭い黒い目が覗いている。
開襟シャツとジーンズも似合ってるけど、もっとキメたらメンズ・ファッション雑誌に載ってもおかしくない。
先に目をそらしたのは、彼の方だった。
まじまじと見ていたことに気付き、わたしは決まり悪くなって「す、すみませんっ」と頭を下げた。
つられて、彼もちょっとお辞儀を返してくれた。でも、目のやり場に困った、というように、視線をさまよわせている。
あっ、わたしのこの格好!
思わず頬が熱くなった。色気のないポニーテールに、猫模様のロングTシャツ。襟は肩までずり落ちている。腿のあたりから素足が丸見えだ。
駆け寄った母がソファーに落ち着かせるや、祖父は大の字にもたれかかって、いびきをかき始めた。
「仕方ないわね。もうマツ乃さんも帰ってしまったし……。あなた、ちょっとごめんなさい。お部屋にお連れするから、手伝っていただける? 美里、お茶のお支度をお願いね」
彼の手も借りて、母が祖父を運んでいった。