明日へのメモリー
「なぁ、覚えてるか? お前が俺の部屋に初めて押しかけてきた夜のこと……」
「それは……、もちろん……」
「あのときだった。自分の気持がお前に傾いてるって、はっきり自覚したのは……。あまりにもまっすぐに『俺だけ』を見て話すお前に『ヤられたな』って感じで……」
「う……そ……」
「わかったら、返事は?」
「……はい」
ソフトに促され、やっとうなずいた。またぼろぽろと涙がこぼれる。
ほんとに泣き虫だな、美里は……。そうつぶやいて、彼が指先で優しくぬぐってくれる。
難しいことも、いっぱいありそうだけど。
自信なんか全然ないけど。
この人がいてくれれば、わたしも、何とかやっていけるかな?
それから、まるで約束するように、彼がポケットからもう一度あのルビーのペンダントを取り出して、首にかけてくれた。
樹さんの胸に顔を埋めながら、わたしは、二人が初めて出会った夜のことを思い出した。おじいちゃんが天国で手を叩いて喜んでいそうだ。
たくさんの思い出が、今、輝きながら未来へと伸びていくようだった。
それは確かな一本の道になって、二人の前にどこまでもどこまでも続いていた……。
~ 完 ~