鈍感ガールと偽王子
「……お前、本当なんも考えてないのな」
「ど、どういう意味?」
いつもはあまり結い上げていない髪。
だから、間近に覗く白い首筋が、妙に色っぽく見えて。
「なんで、そんな無防備なわけ」
「む、むぼうび?」
訳が分からない、というように困った顔をする美結。
……だからその上目遣いやめろって…。
「意味わかんない…!あたし、お蕎麦作りに来ただけだもん!!」
「だからさ、なんで本当にそう思うわけ?」
「はい?」
「なんで、その意味考えてくんないの」
俺の言葉に、ますます眉を寄せる美結。
「…だって、お蕎麦食べたいってメールくれたから…」
腕の力を緩めると、美結の身体がゆっくりと離れていって。
美結は、俺の傍にそのまますとんと正座した。
「うん」
「だから、そっか、今日大晦日だもんねって思って…」
そう。
……今日は、大晦日だ。
美結に頼んだのは、年越し蕎麦。