鈍感ガールと偽王子
「……なんで怒ってんだよ。…最後まで、やった方がよかった?」
「ち、ちがう、けど…」
「俺、軽い奴に見られるけど、酔った女に手ぇ出すようなことはしねえよ」
「…手、出してんじゃん…?」
最後まではしてなくても、そういうこと、したんだよね…?
「……ほんと、悪かったと思ってるよ」
「……ううん。なんか、ごめん。もとはと言えばあたしが悪いんだよね?覚えてないけど、あたしが誘ったんでしょ?」
椎葉くんだって年頃の男なんだし、そりゃ据え膳食わぬはなんとやらってやつだよね。
うん。仕方ない。
最後までしなかったのは、あたしに魅力がなかったからだね。
「あはは。ほんと、お騒がせしましたー。椎葉くん1限だっけ?急がなきゃね。ほら、早くシャワー浴びてきなよ。あたしその間に着替えてるから」
「あ、あぁ…」
あたしの笑顔も明るい声も、偽物だってきっと椎葉くんは気付いてる。
でも、何も言わずに、ただ戸惑ったような顔をして、部屋を出て行った。
あたしはしばらく動きたくなくて布団にくるまったまま、ぼんやりしていた。
やがて、シャワーの音が聞こえてくる。
「はぁ…」
動かなきゃ。
早く、この部屋から出てかなきゃ。
ここは、あたしがいていい場所じゃないんだ。