鈍感ガールと偽王子
まぁ、でも男友達や彼氏がいなくたって十分楽しい大学生活だし、別にこのままでもいっかなって、思ってた。
つい、さっきまでは。
『実は私、彼氏できたんだよね』
恥ずかしそうにそう言った里奈の言葉に、祝福の声が上がる。
もちろんあたしも「おめでとう」って言った。
でも、心の中はそんな言葉とは裏腹に、戸惑いと、そして焦り。
それと、なぜか里奈に裏切られたような気さえして。
あたしの親友である里奈は、あたしと同じように、あまり異性と接するのが得意じゃなくて。
だから、どこかで安心していた。
あたしと同じように、里奈もずっとこのまま、男なんて登場しない大学生活を送っていくのだと。
『ありがとう』
そう言って笑った里奈の顔が、いままで見たことないくらい可愛くて、あたしは、どうしようもなく。
……嫉妬、した。
『ねえ、あれ、王子じゃない!?』
沙奈の声に、あたしはハッとする。
……あたし、今、何考えてた?
親友なんだよ?
それなのに、心から、おめでとうって言えないなんて。