鈍感ガールと偽王子
『美結、ほら、王子!!』
『え、あっ、うん、どこ!?』
なんとか周りにこんな醜い自分が気付かれないように、テンションを上げようと笑顔を作った。
あそこだよっ、と沙奈が指差したのは、少し離れたテーブルでオーダーをとって
いる若い男。
あたしの位置からだと横顔しか見えない。
だけどその男はお客さんに爽やかな笑顔を振りまいているのが分かった。
でも、そんなこと、あたしにはどうでもよくて。
それよりもこの醜くて悲しい感情をどうしたらいいものかと、焦っていた。
『いいなー…。あたしはなんでそういうのできないんだろ…』
理由なんて分かり切っているくせに、カクテルを口に運びつつそう呟く。
『美結、可愛いのにねぇ。あ、あれじゃない?多分美結って見た目お嬢様タイプの可愛さだから、声掛けにくいんだよ。だから、もう自分からいっちゃえばいいんじゃないの?』
沙奈の言葉に、瑞希がフライドポテトをつまみながら、うんうんと頷いている。
『えー、そんなの無理だよ…。あたしが超奥手なの知ってるでしょ?』
『でもさ、一回思い切って声掛けてみたら?案外うまくやれるかもよ?美結、女の子相手なら饒舌なんだし、慣れちゃえば男も女も関係ないって』
そういうものなのか…?