鈍感ガールと偽王子
それから。
『自分からいっちゃえばいいんじゃないの?』
その言葉が、ずっと頭から離れなかった。
みんなの話に相槌を打ちながら、そればっかり考えてしまっていた。
だから、知らないうちにお酒がすすんでいて。
もう一軒行こうって沙奈や瑞希が言い出して、それに里奈も賛成していたけど、とてもじゃないけどあたしはそんな気分になれなくて。
だから、適当な理由を付けてその誘いは辞すことにした。
支払を済ませて外に出ると、秋らしいひんやりとした風が吹いていて。
いつもなら外に出て冷たい風に当たれば酔いが少しは覚めるのに、むしろくるくると視界がぶれて。
なんとかみんなを見送ったはいいけど、そこで気力が限界に達してしまっていた。
思わずふらついた先に温かい手が差し伸べられて、あたしは。
醜い自分をなんとかしたくて、それが男の腕と知りつつ、確かに、言った。
『今日だけ、傍にいてくれませんか』と。