鈍感ガールと偽王子
とりあえず沙奈を引き離して、部屋に入るよう促す。
「適当に座ってて。あたし今の今まで寝てたんだよね。ちょっと顔洗ってくる」
「はいよ」
洗面所の鏡に映ったあたしは、睡眠のおかげかスッキリした顔をしていた。
さっきシャワー浴びる前は目の下のクマもすごくて、こんな顔で椎葉くんと喋ってたのかとちょっと凹んだんだよね…。
「おまたせ。何か飲む?」
顔を洗ってから部屋に戻ると、いいから、と沙奈に促されて沙奈の隣に腰を下ろした。
「何?いきなり来てどうしたっていうの」
「美結、あんた王子と何があったのよ」
「……は?」
王子って…。
椎葉くん?
確かに『何か』はあったけど、どうして沙奈が知ってるの?
「今日の1コマ、あたし王子と同じ講義とってるのよ」
「へー。っていうかよく1限なんて行ったね。昨日あたしが帰った後もまだ飲んでたんでしょ?」
「そんなことはどうでもいいのよ頑張って起きたのよ。で、今日講義が終わった後にあたし、なんと王子に話しかけられたの!」
とんでもないことが起きた!
とでも言いたげに、ダーンとテーブルに拳をついて沙奈はそう叫んだ。