鈍感ガールと偽王子



……相変わらず、殺風景。


物がありすぎてごちゃごちゃしてるあたしの家のキッチンとは大違い。




「……あ、やば。ケチャップ買ってくるの忘れた」



スーパーの袋から買って来た食材を出しながら、あたしはため息を吐いた。



いちばん大事なもの忘れてどうするよあたし!



「ソースならあるけど?」



あたしの隣でポリポリとポッキーを食べながら、椎葉くんはそう言って笑う。



「…え。椎葉くん、オムライスのご飯がソースライスって、聞いたことある?」


「ないけど」


「ていうかソースじゃ卵に文字書けない」


「頑張れば書けんじゃね?」


「……」


「美結。眉間、シワ寄ってる!」



そんな怒んなよ、と笑って。



椎葉くんはパクッとポッキーを口の中に放り込み、



「わかったよ!」



と、あたしに向かって頷いた。



「何が分かったの?」



「買ってくるから、作ってて。ケチャップくらいコンビニでも売ってんだろ」




そう言うと、椎葉くんはいったんキッチンを離れ、財布を手に戻ってくる。


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