鈍感ガールと偽王子
「ごめん。やっぱ、嬉しいもんだな」
「…嬉しい?」
あたしは顔を覆っていた手を少しだけずらして視界を解放すると、椎葉くんを見た。
「……美結の初めてが俺で、嬉しい」
あたしに劣らないくらい恥ずかしそうに、視線を泳がせながら手の甲を口元に持っていってそう言った椎葉くん。
瞬間、キュンッ、と勢いよく胸の奥が疼いた。
な、なに、これ…。
「し、椎葉くん…?」
耳、赤いよ…?
「悪い、何言ってんだろうな。忘れて」
「……」
こんな、心臓キュンさせといて。
……忘れられるわけ無いじゃん…。
────そう思ったけど、あたしはどうしたらいいかわからなくて。
私は、大人しくコクンと頷いた。