鈍感ガールと偽王子
でも。
ここまでで、さすがにそれが女のひとだってことは分かった。
あたしが椎葉くんの部屋に出入りするようになってから、誰かが彼の部屋にいたことも、訪れたこともなかった。
勝手に、自分と、彼だけの空間のような気がしていた。
……そんなわけ、ないのに。
やがて部屋のドアが開き、椎葉くんが出てきた。
────瞬間。
その女のひとは、勢いよく椎葉くんに飛びついて。
なんのためらいもなく。
自分の唇を、椎葉くんの唇に重ねた。