鈍感ガールと偽王子
「……っ!?」
ちゃんと見えたわけじゃない。
暗いし、そんな近くでもないし、あたしの場所からじゃ『顔が重なった』って見えただけ。
……でも。
顔をくっつけるなんて、それ以外あり得ないよね?
あたし、間違ってないよね?
……胸が痛い。
鼻の奥が痛い。
喉が、痛い。
……だめだ、泣く。
「……ッ」
あたしはもう見ていられなくなって、ギュッと唇を噛んで。
じんわりと血の味がしたけど、不思議と痛みはなくて。
きっとそれは、そんな傷よりずっと、痛い場所があるからで。