館‐yakata‐

タツヤはケンの顔をじぃーっと見ていた。



ケン:「……何か?」

タツヤ:「おまえ…、忘れちまったのか?」

ケン:「はい?」

タツヤ:「いてっ…」


アイコがテーブルの下でタツヤの足を蹴った。



アイコ:「なんでもないんです、ごめんなさいね!あーおいしそう」



ケンは首をかしげ、厨房へ戻った。



アイコに足を蹴られたタツヤは口を尖らせている。



タツヤ:「…なんで、あれケンだろ!?」

アイコ:「だと思うけどぉ…」




2人はラーメンをすすりながら、見ないようにして、その店員をずっと見ていた。



どう見てもケンだ。






「ありがとうございましたー」




タツヤとアイコは胸がつっかえるような思いで店を出た。



とぼとぼ歩いていると、後ろからケンが走って来た。



ケン:「お客さん!」

タツヤ:「ケン!思い出したのか!?」

ケン:「ケータイ…忘れてましたよ」

タツヤ:「あ…、サンキュ…」



ケンはタツヤにケータイを渡し、店へ戻ろうとしたが、立ち止まり…振り返った。


< 110 / 111 >

この作品をシェア

pagetop