館‐yakata‐
タツヤはケンの顔をじぃーっと見ていた。
ケン:「……何か?」
タツヤ:「おまえ…、忘れちまったのか?」
ケン:「はい?」
タツヤ:「いてっ…」
アイコがテーブルの下でタツヤの足を蹴った。
アイコ:「なんでもないんです、ごめんなさいね!あーおいしそう」
ケンは首をかしげ、厨房へ戻った。
アイコに足を蹴られたタツヤは口を尖らせている。
タツヤ:「…なんで、あれケンだろ!?」
アイコ:「だと思うけどぉ…」
2人はラーメンをすすりながら、見ないようにして、その店員をずっと見ていた。
どう見てもケンだ。
「ありがとうございましたー」
タツヤとアイコは胸がつっかえるような思いで店を出た。
とぼとぼ歩いていると、後ろからケンが走って来た。
ケン:「お客さん!」
タツヤ:「ケン!思い出したのか!?」
ケン:「ケータイ…忘れてましたよ」
タツヤ:「あ…、サンキュ…」
ケンはタツヤにケータイを渡し、店へ戻ろうとしたが、立ち止まり…振り返った。