元カレは教師
あれから四年が経っている。
高校生になっていた私は恋人、彼女、の意味をあの当時よりは深く知っていたし、今は同じ高校の同級生に彼氏もいる。
幼い頃に我が儘を聞いてくれていた慧お兄ちゃんには、感謝と恥ずかしさもあって。
もう、何年も会っていない。
ある日、私のクラスに教育実習生が来た。
クラスの女子がざわめくほどのイケメン。
担任の先生がすぐに静まるようにと注意をして、教育実習生の青年を促す。
「今日からこの山梔子の森高校で教育実習をすることになりました。鈴木慧です。皆さん、宜しくお願いします」
少し緊張を感じる固い声。
整った顔には見覚えがあった。
正確には、少し違う。
あのときより、ずっと大人びた容貌。逞しい体躯。そして低い声。
歓迎するように皆が拍手する中、私は黙ってその青年を見つめていた。
青年はたったひとり、無表情で見つめている私に気づいたのだろう。
目が合う。
あっ、と青年が口を開いた。
私は、同じクラスの彼氏のことも忘れて呟いていた。
「慧お兄ちゃん……」
と。
私の恋心が再燃した瞬間だった。
―おわり―