初恋物語
新生活
暖かい風が吹き、ピンクの花びらが綺麗に舞っている。

北海道では、桜の花びらを4月に見たことなんてない。

北海道の港町で生まれ育った私は、いつも5月中旬ぐらいにしか桜の花は咲かないため、この時期に見る桜の花が新鮮なのだ。

桜の花が綺麗なのは、北海道でも、東京でも変わらないんだな。

綺麗なピンクの桜吹雪に思わず目を奪われてしまった。

「すごく綺麗…」

私、黒崎香奈は、今日から東京の桜ヶ丘高校に入学する事になっている。

紺のブレザー、白のシャツ、チェックの青のスカート、赤のリボンと可愛い制服が有名な公立高校らしい。

こんな可愛い格好があまり似合わないのは仕方ないと思う。

黒渕眼鏡に、肩までの真っ黒の髪、化粧や、おしゃれも一切していない。

いわゆる地味女なのだ。

可愛いくて、おしゃれな子なら、きっともっと素敵に着こなすんだろうな。

私は、シャツの第一ボタンもしっかりとめ、膝下のスカートと、とりあえずしっかり着ている。

似合う似合わないは別として、私はこれでいいんだと開き直る事に決めた。

とりあえず、知り合いも誰もいない所からのスタート。

早くもやる気なしなんだけど。

友達が出来ればいいんだけどな。

とりあえず不安。

すごく不安。

重い足取りで、高校までの道のりを歩いていく。

それでも、綺麗な桜の花を見ながら不思議と笑みが浮かんでくる。

これからしばらくの間は、この桜の花を見るために、頑張って学校に行けそうな気がする。

本当に桜の花が好きなんだなと改めて思う。

北海道の住んでいた家の庭には、桜の木が植えてあって、5月下旬頃によく花見をしていた。

新しい家にも、嬉しい事に桜の木が植えてあった。

今は綺麗に桜の花が咲いている。

新しい家でも、学校に行く通学路でも大好きな桜の花が見れて、それだけで元気が出る。

なんだかんだで楽しみに感じている私がいる。

これから、頑張って行けそうな気がするんだ。

少しの勇気を桜の花からもらい、高校まで軽やかな足取りで向かった。


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