恋するキミの、愛しい秘めごと
「南場さん。プレゼンの資料の確認したから、ちょっと打ち合わせしよう」
週が明けた月曜日の午後。
頭上から聞こえたその声に顔を上げると、カンちゃん仕事バージョンの宮野さんが立っていた。
「あ、はい。お願いします!」
「先にミーティングルームに行ってるから、ゆっくりでいいよ」
慌ててパソコンを閉じて準備を始めた私にそう声をかけ、凛とした様子で去って行く。
その後ろ姿に、隣の小夜が溜息を吐いた。
「宮様と密室ミーティングとか。いいなぁ、日和は……」
「……」
二週間近く前、小夜が会社近くのカフェに通い詰めるキッカケになっていたあの男の子に彼女がいる事が発覚した。
私が思っていたよりもずっと本気だった小夜は、しばらくの間誰から見ても分かるくらいあからさまに落ち込んで。
再び、いち宮様ファンに舞い戻った。
そんな小夜に彼氏が出来たとは言い出せず、「何言ってんの」と曖昧に笑って席を立つ。
手には、初めてプレゼンターを任された競合プレゼンの資料。
有力ライバル社の代表は彼氏という、残念なおまけは付いているものの……。
それでも、少しずつ社会人として成長出来ている自分が嬉しかった。
都内に新しく出来る博物館内のカフェという、そこまで大きくはない仕事だけれど。
次の顧客に繋げるチャンスだからと、贅沢な事にカンちゃんがサポートについてくれていた。