恋するキミの、愛しい秘めごと
次の日。
あの画像を見てすぐに作り直した資料を渡すと、カンちゃんはそれに視線を落として、ドキドキする私に言ったんだ。
「これで課長に出してみよう」
「……え?」
それって。
「俺はこれでいいと思う」
爽やかな“宮様スマイル”を浮かべて、女子社員の溜息を誘っているのが若干不服ではあるけれど、企画が通ったのは素直に嬉しい。
「あともうひと頑張り。ちょっと急ぎになるけど、プレゼン用の資料も頑張って」
「はい! ありがとうございます!」
私の元気な声に少し笑って席を立ったカンちゃんに頭を下げて、緩みそうになる頬を隠しながら自分のデスクに戻った。
球状の大小様々な水槽に、小さなアクアリウムをいくつも作る。
熱帯魚が泳いでいる物もあれば、水草だけの物。ウミホタルなんかが入っていてもいいかもしれない。
その一つ一つをライトアップさせながら、真っ暗な店内のテーブルや床や壁に埋め込んだり、吊り下げ式の水槽を使って天井から吊るしたら……。
その空間は、宇宙みたいにキラキラ光ってきっとすごく綺麗なはず。
昨日の夜、カンちゃんのタブレットを見ながら考えたのは、そんな事だった。
大それた事を言ってしまうと――小さな宇宙を作ってみたい。
そういう事だ。
実質カンちゃんに決定権があるようなものだから、カンちゃんがオッケーならよっぽどの事がない限りストップをかけられる事もない。
もうプレゼンは再来週に迫っているから、とにかくそれまでに企画を詰めていかないと。
午前中のうちに水槽業者に電話をして、施工が可能という返事はもらっている。
以前一緒に仕事をしたことのある、海洋大学の水棲生物育種の研究をしている先生にもアドバイスをもらって……。
とにかくやる事はいっぱいで、残業が増えることは確実。
それなのにこんなにも楽しい気持ちでいられるんだから、私もカンちゃんの事を言えないくらい、仕事大好き人間なのかもしれない。
『これから会議だけど暇だから、調べものとかあったら言って』
暇って、ダメじゃん。
今しがたカンちゃんから届いたメールに微笑んだ私は、コーヒーに口をつけて気合を入れ直してパソコンに向かった。