恋するキミの、愛しい秘めごと
「――さん。おーい、南場さん!」
不意に聞こえた声に顔を上げると、ぼんやりと見える景色が、いつものものと違う。
……ここは?
入ったままのコンタクトがゴロゴロして、思わず目をこする。
「あ、起きた?」
「……っ!」
「おはよう」
驚きすぎて言葉を失う私の目の前には、茶色い瞳を細めて笑う榊原さんが座っていてた。
そうか。
ここは、榊原さんの家だった。
乾いて目に貼りついたコンタクトが気持ち悪くて何度か瞬きをすると、やっと自分のいる場所が見えてくる。
「よく寝てたから、このままにしておこうかとも思ったんだけど……。そろそろ起きた方がいいと思うし、ゴハンも出来てるし」
クスクスと笑う彼の言葉にハッとして時計を見ると、もう夜中の0時過ぎ。
「あの、ごめんなさい!!」
久々に会えた彼氏に、仕事をするからとゴハンを作らせた挙句、爆睡って。
おかげで仕事はサクサク進んで、家で出来ることはほとんど終わりというところまで出来たけれど、これは酷すぎる。
「本当にごめんなさい」
けれど、榊原さんというのはどこまでも出来たお人で……。
しょんぼりしながら謝る私の頭を優しく撫でたかと思うと、スクリーンセイバーに切り替わっていたパソコンをチラッと眺めて「仕事、終わりそうで良かったね」なんて言葉をかけてくれる。
「さて、そろそろメシでも食いますか」
「……もしかして、待っていてくれました?」
「うん。一緒に食べたかったし」
それに結構時間もかかったし――と、本当なのか嘘なのか。
とにかく私は、そんな気遣いの言葉を口にしてリビングダイニングに歩いて行く彼の背中を追った。