恋するキミの、愛しい秘めごと
「あのクライアントのお偉いさんと、うちの会長は旧知の間柄でさ。この前のあれは、形だけの公募」
平然とそんなことを言ってのける目の前のこの人は、本当に私が好きになった榊原さんなのだろうか。
「でも、どうして……」
「ん?」
「それと私は、関係ありません」
少しでも気が緩むと、声が震えそうだった。
睨み上げるようにしてゆっくりと訊ねた私に、榊原さんは一瞬驚いたように目を見開いた。
だけど、すぐに困ったように笑って、私の髪を撫でながら言ったんだ。
「日和のプランは、潰すには勿体ないと思ったからだよ」
「……っ」
だからって、どうして。
そんなの勝手にあんな事をした理由にならない。
「そんなの、おかしいです」
私がどんな思いであれを作ったか。
それを全て一瞬で奪い取られて、あたかも自分の案かのように人の目に曝されて……。
小さく首を振る私に瞳からは、涙がポロポロとこぼれ出して、それを見た榊原さんの表情が微かに歪んだ。
「あのままじゃ、あの案はもう表に出ることはなかったんだ」
「……」
「今はそんな風に思うかもしれないけど、形になった時にこれで良かったと思うんじゃないかな」
榊原さんは、一体何を言っているんだろう。
だってあれは私が、初めてカンちゃんに任された仕事だったのに。
カンちゃんの手を借りながらではあったけれど、自分なりに必死に頑張って作り上げたものだったのに。
それを――“これで良かったと思う”?
そんなこと、思うはずがない。
「私は……っ、榊原さんは私と同じ仕事観を持っている人だと思っていました」
「……」
「その地球を見た時から、この人の仕事が好きだって思いました」
でも。
「――もう信じられません」