恋するキミの、愛しい秘めごと
「俺は、君のそういう所が好きだった」
私の一言に、ポツリと呟く榊原さんの瞳が震えた気がした。
「……榊原さん?」
「いや、日和はやっぱり賢いよ」
けれど、一瞬でそれを自嘲するような笑みに変える彼の心は、やっぱり読むことが出来そうにない。
「宮野はきっと、事実は語らない――というか、“語れない”よ」
「……」
「だから俺が、教えてあげる」
その先の言葉を、聞いてはいけない気がした。
だから私は、小さく首を振ったのに。
榊原さんはそんな事を気にも留めずに、「聞いておいて損はないと思うから」と笑いながら、再び口を開いて、
「あの“地球”は、宮野が君に贈るために作った物なんだよ」
まるで世間話をするみたいにそう告げた。
「――え?」
例えるなら、空気のない空間に放り出されたみたいに。
息を吸い込む事が出来なくなった私の耳が、キーンと嫌な音を立てている。
すっかり音のなくなった世界に唯一響くのは、榊原さんの静かな声。
だけど、その口から語られる言葉の意味が、私には……分からない。
立ち上がったまま、動けなくなってしまった私の手首を榊原さんが掴み、隣の席にストンと座らせた。
「――“ヒヨ”」
「……っ」
「君の名前は、宮野からよく聞いてたよ」
何だろう。
すごく喉が渇いている。
それに、頭が少し痛い……。
「俺もね、今さっき君の存在に気が付いたから、まだ頭の中が整理しきれていないけど。予想はきっと、十中八九当たってる」
榊原さんの言うことが信用出来るという保障なんてどこにもない。
むしろ、信用できなくて当たり前なのに……。
「前に話してた“女装癖のある彼氏”、付き合いだしたのって20歳の時から?」
「どうして……」
確かに彼と付き合い始めたのは、成人式の少し前――20歳で付き合い始めて、21歳の冬に別れた。
だけど、どうしてそれを榊原さんが知っているの?
思わず眉根を寄せた私に、榊原さんは表情を変えずに「わかりやすいね」と微笑んで、
「俺はそれを、宮野から聞いたからね」
まるで焦らすように、徐々に核心に迫るような思わせぶりな話し方をする。