恋するキミの、愛しい秘めごと

「今ならまだ“イトコごっこ”が続けられるかしれないけど。……どうする?」

「そんな聞き方、狡いです」

「狡いのは、洗いざらい話をしている俺に嘘を吐いてる日和でしょ」


そんな事を言われても、榊原さんの話す事の全てが事実だとは限らない。

でも、私とカンちゃんの関係を知った今、吐いたところですぐにバレる嘘をあえて吐くとも思えない。


俯いて考えていると、クスリと笑う声が聞こえ、徐に顔を上げた先にあった榊原さんの顔は、何とも形容し難い表情を浮かべていた。


「今更、何なんだろうね」

「え?」

「今自分の中に湧き上がってる感情に、正直俺自身も戸惑ってるんだ」

「……」

「自分に都合がいいように物事を正当化するのは得意だった。今までずっと、自分がやってきた事を後悔した事なんてなかったのに」


「何か変なんだ」――そう告げた榊原さんは、苦笑しながら深い溜息を吐く。


「それは今、過去に自分がした事を後悔しているという事ですか?」

「……さぁ、どうだろう」

「そうだとしたら、どうして――」

「敷いて言うなら、日和のせいかもね」


私の問いに曖昧に笑って「で、どうする?」と、頬杖を付きながらもう一度訊ねる榊原さんの瞳は、何かを吹っ切ったかのように澄んでいて。

私の吐く嘘なんて、簡単に見抜かれてしまいそう。


「……」

彼が私に、何を伝えようとしているのかは分からない。

ただ、それを知ることで、私とカンちゃんの関係が変わる可能性があるという事は容易に想像出来た。


“もしも今、君が宮野のことが好きだとしたら”、イトコごっこはもう続けられない――そう言いたいんでしょう?


一番大切な事は、私がこれから、カンちゃんとの関係をどうしたいのかということ。

それと、例えカンちゃんに抱く感情が変わったとしても……カンちゃんがそれを受け止めてくれることはない――それをきちんと理解すること。


私は、どうしたい?

この先、苦しい想いをする事になったとしても、それを知りたい?


「……榊原さん」

「うん」

そんな事を考えている時点で、私の答えは決まっているじゃないか。


「話、聞かせて下さい」


ごめんね、カンちゃん。

カンちゃんが私に言わないって事は、もしかしたら私に聞かれたくない事なのかもしれないけど。

もしかしたら、今まで通り一緒にいられなくなっちゃうかもしれないけど。


それでもやっぱり、私は本当の事が知りたいよ。

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