恋するキミの、愛しい秘めごと
「今日、仕事大丈夫だった?」
カンちゃんが口を開いたのは、食事を始めて数分経った頃。
「急ぎの仕事は終わらせといたんだけど」――という言葉通り、知らぬ間にかなりの仕事量を消化していたカンちゃんは、一体いつからこのお休み計画を立てていたのか。
「大丈夫だったけど……急に休むからビックリした」
何となくその目を真っ直ぐ見つめられずに、スプーンに視線を落とす。
いつもと同じ食卓のはずなのに……。
やっぱりどこか違う空気に、私も緊張していたのだと思う。
――さっきから、心臓の鼓動が少し速い。
ダイニングテーブルを挟んで座るカンちゃんをチラリと眺めると、彼はいつも通り。
テレビに映る向井君を見ながら、「俺の方がいい男じゃねーか?」なんてありえない軽口を叩いていた。
いつもより少し長い時間をかけて夕食を取り、食器を洗って片づけをして。
一旦自室に戻っていたカンちゃんがリビングに再びその姿を見せて、テレビを消した瞬間、半分忘れかけていた緊張がまた私の体を強張らせた。
「ヒヨ」
「……何?」
「ちょっとこっち来て」
いつも通りソファーに腰掛け、私を手招きする。
どうしよう――と思ったところで、逃げても仕方ないんだから。
覚悟を決めて「うん」と曖昧な返事をした後、少しでも緊張を解すためにと、コーヒーを淹れてからカンちゃんの元に向かった。