恋するキミの、愛しい秘めごと
ぎこちなくソファーに座ると、「スゲー顔になってるぞ」と隣に座っているカンちゃんに笑われた。
でもしょうがないじゃない。
昨日からずっと頭が混乱したままなんだから。
少し唇を尖らせたまま、手に持っていた色違いのカップをテーブルに置いた。
カンちゃんは「ありがと」と言いながら、それをひと口飲んで、
「……何から話そうかな」
一瞬視線を宙に漂わせながら静かな声でそう呟くと、少し考え込む仕草を見せる。
私はその間、何も言わずにどこか穏やかにさえ見える彼の横顔を見つめていた。
「俺と榊原さんの関係は聞いた?」
暫しの沈黙のあと、投げかけられた質問に曖昧に頷く。
「仲が良かったって……」
「うん。あとは?」
「それから……あの“地球”は、カンちゃんから盗った物だって言ってた」
その話を榊原さんから聞いた時、私でさえ憤りのような、悔しさのような――とにかく彼に対する怒に似た感情を覚えたのに。
「うん、そう。あれの原案は俺の物だった」
当人であるはずのカンちゃんは、私の言葉にふっと口元を緩め、困ったように微笑んだ。
「でもね、あれは本物じゃない」
「……」
――“あれの本物は宮野しか知らない”
確かに榊原さんもそう言っていた。
「だからあれを榊原さんのグループが発表した時、やられたとは思ったけど、正直、憎むまでの気持ちは抱かなかった」
「……」
「“こんな事するような人達に、あれと同じ物は作れない”――って自分に言い聞かせて抑えてた部分も多少はあったのかもしれないけど」
ゆっくりと、選ぶように言葉を紡ぐカンちゃんの口調からは、確かに怒りの感情は感じ取れない。
「冴子との事も聞いたよな?」
「……うん」
「あの頃の冴子は、見ていられないくらいボロボロだったんだ」
「うん」
「ただ傍にいただけなのに、俺達のゴタゴタに巻き込まれて……。一番の被害者は冴子だ」