恋するキミの、愛しい秘めごと
――数日後。
カンちゃんが会社を辞めたという知らせを聞いて、同僚たちは様々な反応を見せた。
驚いて言葉を失う人、泣き出す女性社員、「無責任な」と眉を顰める人もいれば、チャンスがきたとばかりにその仕事を引き継ごうと必死になる人もいた。
けれどそこはやっぱり、“仕事が出来る宮野さん”。
最後までそれを貫き通したカンちゃんは、知らぬ間に全ての仕事を篠塚さんに引き継いでいた。
「南場さんはサポートから外して、彼女がメインの仕事を優先させてあげて下さい」という伝言を部長に残して……。
だけど私は、それに対して首を縦には振らなかった。
「自分の仕事も予定通り進めます。絶対にご迷惑はおかけしないので、篠塚さんのサポートに付かせて下さい」
頭を深々と下げる私に、部長と篠塚さんは驚いて目を丸くしていたけれど、
「きっと彼女の方が宮野君の仕事には詳しいと思うので、彼女をリーダーにして、私がサポートに回ります」
篠塚さんが渋る部長にかけてくれたその一言で、私はカンちゃんと進めていた仕事を彼女と一緒に引き継ぐことになった。
仕事が大好きなカンちゃんにつられるようにして、いつの間にか私も、この仕事が大好きになっていた。
色々言う人もいるけれど、篠塚さんへの引き継ぎの細かさから、彼がどれほどここでの仕事を大切にしていたのかが解るから。
だから、カンちゃんが大切にしてきた物を、私がここで形にしたいと思った。