恋するキミの、愛しい秘めごと
泣きじゃくる私の背中を、高幡さんはその温かい手でポンポン叩いて、
「宮野君は優しくて、強い男だ。だから、大丈夫だよ」
そんな優しい言葉をかけてくれるから、ますます涙が止まらなくなってしまった。
せっかく最後の夜だったのに。
高幡さんと一緒に食べたゴハンの味は、ほとんど覚えていない。
それでも帰りしな、玄関で握手をした彼の手の温もりだけは消えることなくハッキリと覚えていた。
そしてその4日後、高幡さんは予定通りカンちゃんがいるイギリスに、沢山のお土産を抱えて飛び立って……。
私はというと、自己嫌悪に陥りそうな自分を誤魔化すように、毎日何も考えられなくなるくらい仕事ばかりするようになっていった。
それはもしかしたら、知る事のなかったカンちゃんの“夢”の代わりに、この会社に残していった彼の“夢”を叶えようと、無意識のうちに思っていたのかもしれない。
とにかく働いて働いて、カンちゃんとは一度も連絡を取らないまま。
気がつけば、1年という歳月が流れていた――……。