恋するキミの、愛しい秘めごと

だけど、どうしてそこに私の名前が?

わけが解らないまま、後でゆっくり読み返そうと思ってすっ飛ばした企画書に、もう一度目を通そうとした時だった。

「南場、ちょっと来てくれー!」

あからさまに上機嫌な部長の声が、広いオフィスに響いた。

どうやらたった今、メールでカンちゃんの企画が通った事を知ったらしい田辺部長が、自分のデスクから私を呼び寄せたのだ。

「は、はい!」

それに慌てて立ち上がり、みんなの視線を感じながら部長の元に辿り着くと、そこには先に呼ばれていたらしいカンちゃんの姿もあった。

部長に気付かれないようにチラッと隣を見ると、それに気付いたカンちゃんがメガネの奥の目をわずかに細めてスッと逸らす。

その視線の先には満面の笑みを浮かべる部長の姿が。


「聞いたぞ、南場!」

えぇっと、何をでしょうか。

今起きている事を何ひとつ理解していない私は、「はぁ」と何とも間抜けな言葉を口にして。

「あのスポンサー集めの方法を考えたのがお前だったとはなー」

次の一言に、眉根を寄せた。

「お前がまさか宮野とディスカッション出来るほど成長したとは」

感慨深気に頷く部長の言っている事はやっぱりわからなくて、戸惑っている私の代わりに口を開いたのは隣のカンちゃんだった。


「南場さん、今急ぎの仕事ってある?」

「え? いえ……」

「じゃー、今後のことを少し話し合おうか」

「あの、」

「それでは部長、少しミーティングをして来ます」

そう言ってカンちゃんは、数多《あまた》の女子社員を虜にしてきたのであろう穏やかな笑みを浮かべ、私をミーティングルームに行くよう促した。

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