恋するキミの、愛しい秘めごと

しばらく二人で、空を見上げていた。

だけど、12月のベランダは寒くて。

「……くしゅんっ!」

大きなくしゃみが出てしまって、気まずさからチラッと隣を盗み見る。

そこには目を瞬かせるカンちゃんがいて、オズオズと顔を見上げる私を見てプッと吹き出した。


「部屋入りな」

「……カンちゃんは?」

「これ吸い終わったら戻るよ」

そう言いながら、指に挟んだ火をつけたばかりのタバコを揺らす。


でも何となく、放っておけなかった。

だってほら、反抗期だし。

放っておいたら、もっと悪い方にいってしまうかもしれないし。

ジッと目を見ながら頭を横に振ると、カンちゃんは少しだけ困ったように笑い、私の頭に手をポンと乗せて部屋に戻って行ってしまった。


もしかして、邪魔だったかな?

ひとりで居たかった?

隣にいたら、少しだけでも元気づけられるかもしれない――だなんて、思い上がりも甚だしかったか。

「はぁー……」

空回る自分の行動に溜息を吐いたその時、体が柔らかい物にフワリと包まれ、慌てて振り返った。


「もうちょい詰めて」

「……っ」

すぐ傍から聞こえたカンちゃんの声と、肩に触れる温もりに胸が小さく跳ねる。

「反抗児のせいで、ヒヨに風邪ひかせたら叔母さんに怒られるだろ」

肩にかけられたのは、カンちゃんの香りがするフワフワの毛布だった。


それで私を包んだあと、そこに自分の体を滑り込ませて、笑いながらグイグイと体を寄せてくる。

「もうちょいこっちに毛布ちょーだい」

別に、意識するほどの事じゃない。

家でソファーに座っている時だって、仕事中の移動で電車に乗っている時だって、こんな風に肩が触れる距離でいるんだから。

だから、驚く必要も、こんなに体を固くする必要もないのに。

ただ、ビックリして……。


ほとんど無意識だった。

「あー、でもタバコ臭くなるか」

「平気!! 平気だからっ!!」

私から離れていこうとするカンちゃんの袖を掴んで、思わず声を上げていた。


「ヒヨ?」

何をしてるんだろう、私。

「どうした?」

「あの……っ」

今、何を考えていた?

「シャワー浴びるし、ホント大丈夫だから」

「……」

「カンちゃんが本当に風邪ひいたら困るし。だから、あの……」

一瞬でも、カンちゃんの傍を離れたくないだなんて。


「ヒヨ、ホントどうした?」

なんか私、泣きそうだ……。

俯く私は明らかにおかしくて、それにカンちゃんが気づかないはずがない。

だからいつもみたいに笑わないとと思うのに、ダメだった。

半日、頭に浮かんでいたのはカンちゃんの辛そうな顔で、それを思い出す度に何だか悲しくて。

聞くつもりなんてなかったのに、私の髪を撫でる手が、あまりにも冷たかったから。


「カンちゃん」

「ん?」

「……大丈夫? 何か辛いことあった?」

いつからこうして、独りぼっちでこの場所にいたんだろうって――そう思ったら、聞かずにはいられなかったんだ。

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