恋するキミの、愛しい秘めごと
それからしばらくの間、外から聞こえる雨音を聞きながら二人で並んで光る地球を見つめていた。
この灯りは、本当に不思議な灯りだ。
とても温かくて、滲んでいた視界がだんだんクリアになっていく。
ヒリヒリしていた心の痛みも、いつの間にか引いていて、それがこの球体のせいなのか、榊原さんのおかげなのかはわからないけれど。
とにかくあのまま一人でいたら、絶対に気持ちは沈んだままで、こんな風に気持ちの切り替えは出来なかったかもしれない。
――ここに来て本当に良かった。
震える息を吐き出しながら顔を上げ、真っ直ぐに光る地球を見つめる。
「いいですね、これ」
「でしょ? 自分でもそう思うもん」
「あははっ」
自信満々に答えた榊原さんは子供みたいで、思わず笑みが漏れる。
こんな風に、カンちゃん以外の男の人の笑顔でホッとするのは久しぶりだ。
「榊原さんの話を聞いて、これを見たら、心がすごく軽くなりました。ありがとうございました」
笑いながらそう口にすると、榊原さんはその茶色の瞳を細めて「それはよかった」とニッコリ笑った。
それから私と榊原さんは、キラキラ光る地球の正面にあるソファーに腰掛けて、色々な話をした。
「ところで、南場さんは五年前って何してた?」
「五年前ですか?」
「そう。俺がこれを作った頃」
「普通に大学生してました。あ、初めて彼氏を親に紹介して、“この人と結婚するのかもー”とか浮かれてました」
ふと蘇った記憶に、つい吹き出してしまう。
「ちなみにその人、後々かなりの女装癖があった事が判明して別れたんですけど」
「それはまた残念な……」
「ですよね」
たくさん話をして、たくさん笑って、気が付いた時には日付も変わって雨も止んでいた。
――そして、午前1時近くになった頃。
「じゃー、そろそろ帰ります。長居してしまってすみません」
そう言って、温かい気持ちのまま榊原さんが呼んでくれたタクシーに乗り込んだ。