アイソメ理論
「ねぇ、キサ」
「…ん」
「…かなしいね」
「…ん?」
大好きな人の腕を借りながら言う台詞じゃないような気がしたけど
でも、この国は
かなしくて さみしい
海に命を捧げて、時には悪人にも分類される海賊にまでなって
穏やかな海原での自由と平和を手に入れたのに
まだこの国は、町は
あたし達を解放しないんだ
捨てたくせに
捨てられたから捨ててやったのに
「…故郷(ここ)が、さみしいって泣いてる気がする」
ずるい、ずるい
戻ってこずにはいられない
…つらい
「ラ……」
キサの声がしたと思ったら、それに被さるように激しい音がして、同時に視界の端を何かが走り落ちた。