アイソメ理論


カタカタと身体が震える。

突然の爆破を受けたかもしれない、とか

そんな物騒な心配をしていたあたしの頭を優しく撫でながら、キサは呑気な声を漏らした。


「あーあ…
屋根、とうとう落ちたよ」



ベッドから這い出て外に出ると、屋根の一部が家の中に抜け落ちているのがはっきりと分かった。


「修理なんか出来ないし、ますます寒くなるな」

「次にいつ屋根が降ってくるか、怖くて家入れないよ…」


この町に戻ってくる度、1年に1回だけお世話になっていた家がついに欠陥品になった。


そして一瞬だけそこに見えた残像は、間違いなく懐かしい幸せの一角

瞬きよりも早く、

うかんで きえた


「おとうさん、おかあさん……」


幾年の時を隔てて、ほんの刹那、2人の笑顔が脳裏に甦ったんだ。

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