アイソメ理論
「泣かないの?」
キサがあたしの頭をポンポンしながら聞く。
「…ふたりとも笑ってた」
「ふぅん」
キサも笑った。
あたしも、きっと笑った。
…だけどやっぱり
ちょっとだけ、泣いた。
「ラズ、俺ね」
この国はかなしいけど
この町は、すきだよ
―――ひどく穏やかで、
優しい声音だった
はらはらと舞い落ちる粉雪のように柔らかく
それが降り積もった雪に溶け込むように、その言葉はあたしの中に染み渡った
「ここには、助けてくれる人なんか誰もいないけど、ラズがいたら、そんな人もいらない。
…ラズだけで、いいんだ」
「……うん」
「このガラクタだらけの町は、ラズに出会えた大切な場所だから。…だから、俺の宝物」