アイソメ理論


「それに…こんな町じゃなきゃ、俺とラズはいくら一緒に産まれても、ずっと一緒には…いられない」

「…え……?」


キサの言葉の語尾が曖昧にしか聞き取れなかった。

でも僅かに、寂しそうなトーンに変わったんだ。


「…ん、気にしないで。ラズは知らなくていいことだよ」

そっと交わされた唇は、その隙間を埋めるように少しずつ深くなっていく。


「この町はラズとの思い出そのもので、そんな町に縛られるなんてさ

甘美な鎖だと思うんだ、け、ど」


ゆっくり口を離して、そう言いながら唇の端をチロリと舐めたキサが妙に色っぽくて思わず目を逸らした。

普段常に無愛想なお陰で、時々投下される無意識の賜物は破壊力抜群だ。


こうやってドキドキしたり、笑ったり、励まされたり、立ち直ったり、乗り越えたり

――――生きたり


この一瞬一瞬全てが
キサから与えられた宝物

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