アイソメ理論
道と呼び辛い、いろんな破片が散った道を歩いていると
キサと見た、かなしいくらい綺麗な夕焼けを思い出す。
荒らされた空き家を見ると
盗賊が家に押し入ってきた時、あたしを抱きしめていてくれた震える幼いキサの手を思い出す。
至る所に転がる銃弾の残骸を見ると
銃声が無数に飛び交う中を、キサの手に引かれて駆け抜けたあの日を思い出す。
どんなに酷(むご)い惨状を目の当たりにしても、キサの広い胸が視界を切り離してくれた。
キサのいない思い出などひとつもないくらいに、あたしの毎日はキサだった。
全部、全部
キサがいなかったらあたしは、ラズは成り立たなくて
あたしの目に映る世界は
いつもキサで染まっていた。