アイソメ理論
辺り一面を真っ白に塗り替える雪さえも、愛しいキサとの思い出に侵食されて
「…雪が、きみの色になる」
柄にもなく
例えるならそう、そんな感じ
この町を静寂に包む、分厚く重たい純白だってキサには全然適わない
「…なにそれ」
「…詩(うた)、かな」
「なんか違う気もするけど」
髪や肩にかかる粉雪
「誰かの家探さなきゃこのまま凍死しそうだね」
どちらからともなく歩きだす
鎖がまたあたし達を呼ぶのは1年後
明日にはもうここにはいない
それまで
またキサで埋め尽くそう
かなしくて、愛くるしい町
かなしい景色しか見たことのないあたしは、君の色で塗り潰すことしか知らなくて
ズブズブと キラキラと
侵食される、鮮やかに
( アイソメ理論 )
END