アイソメ理論
「キサ…足痛い…」
雪の上を素足も同然で歩いているお陰で、もはや冷たさは感じない。
突き刺すような痛みが足の先から走り抜ける。
「……しゃーねぇな、乗れ」
ため息ひとつ零した後に、キサがあたしの前に屈んだ。
無愛想なのに、いつもいつも優しいキサが好き。
何年も前、町を出ようと言ったあたしの1番初めの仲間がキサだった。
「キサも冷たいのにごめん…」
「別に、男だし」
キサの背中は細いけど、でもあたしより全然広くて、ずっと昔から知ってて
温かくて落ち着く
ちょうど肩胛骨の上にある古傷は、幼い頃に爆風で飛んできた何かの破片で切ったものだ。
キサの背中は大好きだけど、時に鉄の臭いが甦るから泣きたくなる。