アイソメ理論


「キサ…足痛い…」


雪の上を素足も同然で歩いているお陰で、もはや冷たさは感じない。
突き刺すような痛みが足の先から走り抜ける。


「……しゃーねぇな、乗れ」


ため息ひとつ零した後に、キサがあたしの前に屈んだ。

無愛想なのに、いつもいつも優しいキサが好き。
何年も前、町を出ようと言ったあたしの1番初めの仲間がキサだった。


「キサも冷たいのにごめん…」

「別に、男だし」


キサの背中は細いけど、でもあたしより全然広くて、ずっと昔から知ってて

温かくて落ち着く


ちょうど肩胛骨の上にある古傷は、幼い頃に爆風で飛んできた何かの破片で切ったものだ。

キサの背中は大好きだけど、時に鉄の臭いが甦るから泣きたくなる。

< 4 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop