アイソメ理論
だけど去年の冬も、一昨年の冬も、その前の冬も
薄すぎる布団にくるまり、足りない温もりを補うようにキサと身を寄せ合ってここにいた。
町を出る前も、あたしとキサが産まれたときから、このベッドはあたし達2人のものだった。
お父さんとお母さんは、ベッドの隣で座って寝ていた。
おとうさんとおかあさん
―――――ああ…
だめ、だめ、まだだめ
隣に座るキサの肩に目蓋を押しつける。
残像を消すように、
過去を押し込むように
あれだけ大好きだったお父さんとお母さんが思い出せないの。
思い出したくないの。
だっていつも、
浮かぶ2人の顔は―――
気持ち悪い鉄の味が広がる
空っぽのはずのお腹から何かが込み上げる
不安を掻き消したくてキサの服を強く掴む手が、無意識に震える。